Mercedes Story
Mercedes Story
.
5
“神話”ではないメルセデス・ベンツの安全思想
クルマの性能を語るときによく用いられる尺度に“走る・曲がる・止まる”という3つの要素があります。簡単に言えば、エンジン性能、サスペンション性能、ブレーキ性能のバランスでクルマをトータルな面から評価しようというもので、今日ではもっとも分かりやすい評価基準と言えるでしょう。
しかし、この基準の中では十分に評価しきれない要素が、最近ますますクローズアップされつつあります。
それはパッシブ・セーフティ、受動的安全性です。
事故などでクルマに外部から力が働いたときの受動的な安全性能で、走る・曲がる・止まるの3要素に含まれるアクティブ・セーフティ、つまり能動的な安全性能とのコンビで考えられるべき大切な要素です。

安全性へのこだわりは、戦後のメルセデス・ベンツの自動車作りを象徴するものであり、メルセデスのクルマたちは、一貫してアクティブとパッシブ両面の安全性を考慮しながら設計されてきました。メルセデス・ベンツの安全性能は、今なお世界の自動車メーカーの規範のひとつになっていますが、そこには長年にわたる研究と事故調査の積み重ねがあるのです。
3点式シートベルト、エアバッグ、ABS、ソフノーズデザインなど、他メーカーに先駆け独自に開発された安全機能で、メルセデス・ベンツの先進性を示す代表的な例に、衝撃吸収構造ボディがあります。
この数年来、コンパクトカーのデザインで世界的にクローズアップされた衝撃吸収構造ボディ。それは、今やパッシブセーフティの基本になっていますが、世界で初めてこれを意識して設計されたクルマは1953年にデビューしたセミモノコックボディのメルセデス・ベンツ180シリーズでした。
全てが頑丈に設計されていたそれまでのクルマとは異なり、180シリーズのボディは、キャビン部、エンジン部、トランク部の3パートに分けられ、キャビン部は強固に、エンジン部とトランク部は潰れやすく設計されていました。つまり、衝突時にエンジン部とトランク部が潰れることで衝撃を吸収し、キャビンの変形を防いで乗員の安全を確保するという、とても合理的かつ先進的な考え方がそこにあったのです。そして衝撃吸収構造ボディは、1959年に登場したモノコックボディの220シリーズで高い完成度をもつに至り、今日のクルマ全体の基本技術として世界に広まったのです。
180シリーズのデビューした1953年は、前年に300SLで戦後初めてレースに復帰したシルバー・アローがル・マンやタルガ・フローリオに勝利し、まさに絶頂を迎えようとしていた時です。レースを広告の場としていた世界の自動車業界では、まずスピードや運動性能が重要視され、安全性能は二の次にされがちな風潮がありました。それは、メルセデス・ベンツでさえも例外ではありませんでした。
しかし、走ることについての機能が優れているというだけでは高級車としては十分とはいえません。高級車には高いコンフォート性が必要ですし、事故などの危険な状態に陥ったときに、運転しているドライバーや歩行者を安全に守ることができてこそ、真の高級車といえます。メルセデスが世界の高級車であるためには、絶対的な安全性能は必要不可欠なものだったのです。
そんなメルセデス・ベンツの安全性能を一手に引き受けていたのが、後に“ミスター・セーフティ”と呼ばれる技術者ベラ・バレニーを中心とする開発グループでした。バレニーがメルセデス・ベンツで活動を始めたのは1939年のこと。実は、セーフティへの取り組みは戦前から始まっていましたが、翌年に始まった戦争のおかげでしばらくの間中断していたのです。

NEXT
メルセデス・ベンツ180シリーズ/1953

1953年にデビューしたセミモノコックボディのメルセデス・ベンツ180シリーズ
世界で初めてパッシブセーフティの技術を導入して設計されたクルマ。
セーフティ性能の開発

安全性能の開発
ベラ・バレニーを中心とする開発グループがメルセデス・ベンツで活動を始めたのは1939年のこと。
衝突実験

衝突実験



Index
 
.